痛みと針鎮痛

 

なぜ痛むの?なぜ針で痛みや不調が改善するの?
痛みと針鎮痛メカニズムを説明します。

痛みには急性痛と慢性痛があります。
料理中に包丁で指を切ってしまった、転倒して手をついて、手首を骨折してしまった。これらのケースのように、急激な外力によって体を損傷する事を怪我と言いますね。
このような怪我による急性痛は整形外科に行ってください。多くの場合、怪我が治るとともに、痛みも取れることでしょう。
一方、これもいきなり痛み出すことが多いのですが、その原因が異なる慢性痛。
整形外科でX線やMRIを撮っても骨に異常は無い、しかし、痛いという場合、筋肉に原因があることが多いです。
筋肉は筋線維というものが集まって大きな筋肉を作っています(図1)

そして、これらの筋線維を栄養するため毛細血管が縦横に走っています。
何らかの原因、例えば事務仕事を長時間行うと、首、肩、背中、腰などが凝ります。筋肉が柔軟で代謝の良い若い人や適切な運動で凝り(筋緊張)を改善できる人は良いのですが、そうでない人もいます。
すると筋肉が毛細血管を圧迫し、血流が悪くなります。それがさらに悪化すると筋肉細胞の酸欠が起こります。息を止めていると、死んでしまいますね。それが筋肉細胞のレベルで起きるわけです。これは体にとって緊急事態なので、血液から発痛物質(痛みを起こす物質)が作り出され、問題部位の神経末端を刺激して痛みを生じます。痛みは体の危険を知らせるアラームなのです。
ここで厄介なのは、痛み刺激が体に加わると交感神経が興奮し、筋肉がさらに硬くなる。硬くなるとさらに血流が悪くなるというサイクルが始まることです。
これを痛みの悪循環と言います(図2)。

交感神経の興奮が長く続くと、不眠、不整脈、胃腸障害などの自律神経症状が起きます。痛みにより自律神経失調が起こり、痛みや凝りが改善すると自律神経も安定します。針治療は一石二鳥の治療法と言えましょう。

次になぜ針で痛みが取れるか説明します。
針に限らず痛みを取ることを鎮痛と言います。
患者さんにお話を伺い、いくつか検査をして、痛みの原因を考察し、治療に移ります。
患部にできるだけ少数の針を打ち、微弱な電気を流し、筋肉を刺激します。針を打った時、「ボワ~ン」「ズ~ン」と響く感じがします。この時、軸索反射と言うものが起こっています(図3)。

針鎮痛には神経性と血液性の二つがあります。
脳、脊髄レベルで鎮痛物質を出させ鎮痛を行う神経性鎮痛と血流を改善し、発痛物質を洗い流すことにより痛みが取れる血流性鎮痛です。
神経性鎮痛は施術直後に効果を現し、血流性は発痛物質を洗い流すのに時間がかかるので、数時間から数日後に効果が現れます。
では、血流が改善したかどうかはどうすればわかるでしょう?
血流が良くなると針を打ったところが赤くなります。これをフレアー(発赤)と言い、これが血流改善の目安になります。(図4)

赤くなっている部位が血流改善部位フレアーです。
血流が改善し、発痛物質が洗い流され、痛みは改善していきます。

私は以下のような流派、技法を学びました。
・古典支那医学
・現代中医学
・経絡治療
・良導絡自律神経療法
・トリガーポイント鍼療法
・ドライニードリング
・刺絡
・高麗手指鍼法
・アーユルベーダ
・カイロプラクティックなど。

これらを学び、実践した上で、効果、再現性、科学的根拠などの観点から現在の治療法に至りました。
私が用いる技法は4~5種類のみです。そして、できるだけ少ない針で効果が出るよう工夫しています。
シンプルだけど効果のある針治療を目指しています。